|ゲルマラジオに遭遇す|目覚め|タンパを知る|アマチュア無線を知る|
|初めての送信機|
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M君とは親戚の中でも仲が良かったから話は早かった。早速部屋に上がり込んで設備を見せてもらうことになった。アンテナはダブレット(ダイポール)で既に知っているアンテナだ。受信機は0-V-1だと言われてにやっとした。問題は送信機である。これで交信するんだと言われて見たものは、アルミシャーシーの上にトランスが2つ、真空管が3本載っていた。これなら0-V-1と大差ない。そう思った小僧は「作り方教えてよ」M君「ああいいよ」怖いもの知らずとはこのことである。
それでも小僧は少しは進歩していた。いきなり作らず送信機について勉強を始めたのである。師匠は兄貴。随分と迷惑な話ではあったと思うが、毎日のように押し掛けていっては質問攻めにする。その頃には以前に貰った「初級アマチュア無線工学」も一通り読み終えていたから、ピントはずれな質問で兄貴を苦笑させるようなことは無かったように思う。1ヶ月ほどの問答の末、12AT7で水晶発振(FT-243)とマイクアンプ、ファイナル6AR5、変調も同じ6AR5を使ったハイシング変調(チョーク変調)の3球構成の送信機の回路図が出来た。
回路図は出来たものの小遣いが貰えない。送信機に使う部品など買う金は無い。それでも送信機は欲しい。こういう時にこそ悪知恵というものが出るものである。小僧はCQハムラジオの「ハム交換室」に目をつけた。で、こう書いた。「僕は小学校6年生でアマチュア無線に興味があります。送信機を作ろうと思っているのですが部品が足りません。水晶発振子、真空管の12AT7、6AR5やコンデンサ、抵抗、変調トランスや電源トランスなどです。譲って頂ける方はお願いします。」それって全部じゃないか。それでも今になって考えてみればこんなジジィ殺しの文言は無い。掲載された翌週には見知らぬ大人から、部品がギッシリ詰まったミカン箱が数個届き、必要な部品の殆どをせしめたのであった。(OT、その節はお世話になりました。)
当時(昭和35年頃)はアマチュア無線の勃興前に当たり、良い意味でおおらかであったと思う。アンカバーは確かに居たが、悪質と言えるようなものは少数で殆どは免許を取得する前の「練習」のような感覚で出ていたのでははなかろうか。当時のアンカバーは絶対にアマチュア無線の許可帯には入らなかった。自分たちがアウトローだと自覚していたのだ。当時の多くのJA10がその後、JA1〜JA0になって活躍しているのを私は知っている。勿論、それでも違法であったことには違いない。
さて、部品が揃ってしまった以上作らない選択肢はない。夢中で組み上げた。こうして送信周波数7.033McのAM送信機が出来上がった。が、ここで問題発生。小僧はアマチュア無線の免許が無い。つまり、送信出来ないというか、しちゃイケナイのである。熱中し過ぎて肝心のことはどこかへ置き忘れているのだから、やっぱり小僧は小僧なのである。
困った時は神頼みではなく兄貴頼みである。早速押し掛けて相談してみた。
つづく <2021/06/13 JF1TLT>